「子どもが泣いたとき、怖がったとき、思わずぎゅっと抱きしめてあげる。」
私たち親にとって、ごく自然なこの行動。
実はこの行動こそ、心理学でいう「アタッチメント(愛着形成)」という、子どもの心の成長に欠かせない“土台”を育てている瞬間なんです。
愛着形成とは、不安や恐れを感じたときに、信頼できる人に近づいて安心を取り戻す行動のこと。
そしてそれは、子どもが将来「自分は大丈夫」「きっとできる」と思える自己肯定感のはじまりでも。
「愛着形成って、いつから意識すればいいの?」「中学生や高校生ではもう遅いのかな?」と思う方もいるかもしれません。
もちろん、赤ちゃんの頃の親子関係がスタート地点ですが、心配しなくても大丈夫。
アタッチメントは、子どもの成長に合わせて何度でもやり直せるものなんです。
「安全基地」があるから、人は安心して挑戦できる
アタッチメントを語るときに欠かせないのが、「安全基地」という考え方です。
想像してみてください。
もし今、未開のジャングルに探検に出かけようとしているのに、戻る場所も休む場所もなかったら……不安で一歩も踏み出せませんよね。
子どもにとっての「安全基地」は、まさにその“心を休める場所”なんです。
アタッチメントのエピソード
娘が、初めての球技に挑戦したときのこと。
何度やってもうまくいかず、悔し涙を流しながら私のところに走ってきました。
もしそこで、「何やってるの!また失敗?何回言ったらわかるの!」と責めてしまったら、娘はきっと“挑戦すること”そのものが怖くなっていたと思います。
私は、何も言わずにただ抱きしめて、「頑張ったね。挑戦したことが一番すごいよ」と伝えました。
この「帰れば受け止めてくれる場所がある」という安心感こそが、家庭での安全基地なんです。
失敗を恐れずチャレンジできる力、反省を次に生かすしなやかさは、この安心感の中で育っていきます。
心の安定を支えるアタッチメント
では、実際に“安全基地”を作るために、私たち親はどんな関わりができるでしょうか。
スキンシップと関わり方の大切なポイントは2つあります。
「心の通訳」になってあげる
子どもがかんしゃくを起こしたり、問題行動を起こすとき。
それは「助けてほしい」「わかってほしい」というSOSのサインかもしれません。
「わがまま」「甘え」と決めつけず、「そうか、悔しかったんだね」「今はこれが嫌なんだね」と、子どもの気持ちを言葉で代弁してあげましょう。
そうすることで、「自分の気持ちをわかってもらえた」と子どもが感じ、心が落ち着いていきます。
「アタッチメント・スキンシップ」を意識的に
ただ抱きしめるだけでなく、愛情を伝えるスキンシップを意識してみましょう。
- 頭をなでる
- ハグをする
- 寝る前に手を握る
特別な時間でなくても構いません。
テレビを見ているとき、絵本を読んでいるときでも大丈夫。
「大好きだよ」という言葉とスキンシップをセットにするだけで、子どもは“無条件に愛されている”ことを感じ取ります。
学校や周囲が“新しい安全基地”になることも
家庭が安全基地になりにくいとき、学校や先生、友人、パートナーがその役割を担うこともあります。
子どもが安心して話せる人、受け入れてもらえる経験を積むことは、心の回復にとても大切です。
教育心理学者・野坂先生はこう言っています。
「心と体に傷を負った人は、苦しみを一人で抱え、感情を抑えながら生きている。傷ついた自分を受け入れてもらう体験が必要です。」
「大丈夫だよ」「話してくれてありがとう」
そんな一言が、子どもをもう一度立ち上がらせる力になります。
もし今、子どもとの関係に不安があっても大丈夫。
アタッチメントはいつからでも再構築できるんです。
「この子にとって、自分は安全基地になれているかな?」
こんなふうに、今日から少しだけ視線を変えてみてください。完璧を目指さなくても大丈夫。
「帰る場所がある」「話を聞いてくれる人がいる」それだけで、子どもは前に進む力を取り戻していきます。
まとめ|今日からできる「安全基地」の一歩
安心できる人との“つながり”は、子どもの挑戦を支え、自己肯定感を育てていく大切なもの。
「愛着形成の育て方って難しそう」と感じても大丈夫。
今日、少しだけ意識してみませんか?
- 子どもの話を、まず“聞く”
- まなざしを向ける。
- そっと抱きしめたり、手を握ったりする。
この小さな一歩が、きっと子どもにとって揺るがない“安全基地”にきっとなると思います。

